ねむ亭安楽さんは、四日市市で活動するアマチュア落語家で、はがき絵の作家・講師でもあります。
約12年前に本町通り商店街の「コミュニティサロンいせや」で落語会を始め、四日市を落語のまちにしたいという思いから、落語を聞ける場所を広げてきました。
来やすさを第一に、お金に頼らず続けてきた安楽さんに、これまでの歩みと、思い描く街の姿を聞きました。
| ねむ亭安楽(ねむていあんらく) アマチュア落語家/はがき絵作家・講師 四日市市を拠点に落語会の開催や出演を続け、四日市を落語のまちにしようと活動している。 |
|---|
本町通りにお年寄りの居場所を

落語会を始めたころ、本町通り商店街は高齢化が進み、お年寄りの行き場がなくなっていました。コミュニティサロンいせやを、集まっておしゃべりしながら一日を過ごせる場所にできれば、お年寄りの楽しみになると考えたんです。
目的は「本町通り商店街の活性化」と「お年寄りの居場所づくり」、そして「落語を軸に活動をもう少し広げていくこと」の3つでした。

本町通りだけでなく、市内のあちこちに落語を聞ける場所をつくっていけば、結果として四日市は落語のまちになるだろうと思っています。
落語会を続けるには相応の費用がかかり、普通は入場料などをいただくことになります。お客さんの負担をいかに少なくして、来やすい場にするか。それがスタートラインでした。
アマチュアだからできる落語がある

いせやで落語会をしていたとき、すわ公園交流館の相場館長がふらっと立ち寄って、「うちでもやってくれ」と声をかけてくれました。見に行ってみるといい場所だったので「やりましょう」と始めたのが「四日市まちなか寄席」です。毎回ほぼ満席で立ち見客がいるくらいの大盛況です。館長も、あんなに人が来るとは思っていなかったんじゃないでしょうか。

高座に上がるのは、アマチュアの落語家たちです。プロは師匠から教わったことをそのまま演じ、それはそれでいいところです。一方でアマチュアの場合、目の前にいるお客さんは知り合いや仲間ですから、その人たちに楽しんでもらうことを一番に考えます。つまらなければ、次から呼ばれなくなってしまいます。
プロが上でアマチュアが下という関係ではありません。アマチュアだからできること、いいところもあるんです。
アマチュアの落語家は、落語という技能を持ちながら、生活の基盤は別に持っている人たちです。
商売として興行をするのではなく、好きなことをやって、それを地域に還元しています。そういう人たちがつながっていること自体が、この街にとっての大きな財産です。
関連記事:【すわ公園交流館】もう一度、あの賑わいを取り戻したい
関連記事:「四日市まちなか寄席」で落語を楽しもう!すわ公園交流館の人気イベント
絵が人との間を取り持ってくれる

落語のほかに、昔から絵を描いていて、はがき絵の教室も開いています。
LINEで連絡を取り合っている人たち、一人ひとりに絵を送っているんですよ。
送る時間は相手の都合に合わせ、6時でいい人には6時、それでは早いという人には7時、7時でも早い人には8時と分けています。
手間はかかりますが、人との付き合いとはそういうものです。絵が人との間を取り持ってくれる。

最近はありがたいことに、送った絵を気に入って買ってくれる方もいます。ただ、それは私のことを分かってもらっていて、信頼関係があるからこそ成り立つことで、誰にでも通用する話ではありません。
落語でも同じような関係をつくりたいと考えています。落語が好きな人と会場で顔を合わせ、そこから心の支えになるようなつながりを育てていきたいんです。
四日市が笑って過ごせる、落語のまちになればいい

寄席に人が集まるのは、落語が好きというより、笑いながら時間を楽しく過ごせるあの空気が好きだからでしょう。ぎすぎすした雰囲気ではなく、笑って過ごせる空気が街に漂っていたら素敵じゃないですか。
自治体や企業が催しで人を集めるやり方は、支える側が手を引けば続かなくなるかもしれません。大事なのは、市民の間に落語が浸透していることです。市がどうしようと、企業がどうしようと、寄席へ行けば落語が聞ける。それでいいと思っています。
寄席を続けていくためにも、私は次の世代へ引き継いでいくつもりです。いまは弟子の一人が寄席の企画を担い、新しい演者を呼び込んでくれています。
私自身はお金に関係なくやってきましたが、何の支えもないまま任せるわけにはいきません。人の頑張りだけでつなぐやり方には、いつか限界が来ます。だから、活動を支える資金の裏付けも含めて仕組みとして残し、弟子がまた次の世代へ渡していけるようにしたいんです。
手を取り合える人と手を取り合いながら、その形を探しているところです。