暑い夏、エアコンの冷風も悪くはありませんが、自然で優しい風に癒やされたいと感じることはありませんか……
三重県四日市市の伝統工芸品「日永うちわ(ひながうちわ)」は、そんな心地よい風を届けてくれる逸品です。約300年にわたり受け継がれてきた職人技が生み出す柔らかな風は、今も多くの人を魅了し続けています。
本記事では、四日市在住で日永うちわを愛用している筆者が以下の内容を解説します。
この記事でわかること

暮らしに寄り添う、あなただけの日永うちわを見つける旅へ出かけましょう!
四日市の名産「日永うちわ」3つの特徴
日永うちわは、単に涼をとる道具にとどまりません。まずは、多くの人を惹きつける3つの特徴を紹介します。
- しなりから生まれる優しい風
- 手になじむ丸い持ち手
- 高級感のある美しいデザイン
それぞれ見ていきましょう。
1.しなりから生まれる優しい風

日永うちわの最大の特徴は、扇いだときに生まれる力強くも柔らかな風です。全体が弓のようにしなり、軽やかに扇げるため手首のスナップも心地よく感じられます。
この独特のしなりは、一本の竹からつくられる美しい骨格によるものです。
良質な女竹を選び、一本の竹を最大64本にまで細かく均等に割いて編み込んでいきます。交互に編み込まれた竹が袋状の骨格を形づくり、しなりのある構造が完成します。

竹割りから和紙貼りまで、約20もの工程すべてに職人の技術が注ぎ込まれています!
2.手になじむ丸い持ち手

日永うちわは、持ち手部分にも独自の工夫があります。
「丸柄(まるえ)」と呼ばれる丸い持ち手は、自然な握り心地が特徴です。接着などを行わず、しなやかな女竹をそのまま加工して作られています。
手に取ると、竹本来のひんやりとした感触と柔らかな丸みが手のひらに心地よくなじみます。

長時間使っても疲れにくく、扇ぐたびに手仕事の温かみを感じさせてくれますよ!
3.高級感のある美しいデザイン

日永うちわは実用性だけでなく、見た目の美しさでも多くの人を魅了しています。扇面には上質な和紙が使われ、繊細な模様や伝統的な絵柄が丁寧に施されています。
松阪木綿や伊勢木綿など、三重県の他の伝統工芸とコラボレーションした意匠も人気です。華やかさと落ち着きを併せ持つデザインは、部屋に飾るインテリアとしても映えます。
扇ぐたびに風だけでなく視覚的な涼やかさも感じられるのが、日永うちわならではの魅力です。

贈答品や海外へのお土産としても喜ばれています!
日永うちわの歴史と伝統

日永うちわは、四日市を代表する伝統工芸品です。約300年にわたる職人技の積み重ねが、今も大切に受け継がれています。
その高い技術と文化的価値は公的にも評価され、三重県の「指定伝統工芸品」、四日市市の「指定無形文化財」として登録されています。※
日永うちわがどのように生まれ、広まっていったのか、その歴史をひもといていきます。
江戸時代に始まった日永うちわの起源
日永うちわの誕生は江戸時代にさかのぼります。東海道沿いの日永は、交通の要所として多くの旅人が行き交う「間の宿(あいのしゅく)」として栄えていました。
この地で、豊富に採れる竹と和紙を活かして自然にうちわづくりが始まりました。
当初は実用品として作られていましたが、次第に独自の製法や意匠が発展し、日永の工芸品として定着していきます。
お伊勢参りの旅人に愛された土産物
江戸時代、お伊勢参りは庶民にとって一生に一度の憧れの旅でした。東海道を進む旅人たちは、日永の地に立ち寄り、美しい意匠の日永うちわに心惹かれます。
当時は、好みの絵柄を注文し、伊勢参りの帰り道に完成品を受け取って持ち帰る仕組みが整えられていました。こうした仕組みが「日永うちわ=伊勢参りの土産」として広まるきっかけとなります。
「永餅」「日永足袋」と並び、日永の三大名物の一つとして知られ、街道沿いの土産物店や製造業者は大いに賑わっていたと伝えられています。
想いをつむぐ職人の熟練技術

日永うちわの製作には高度な技術が必要です。特に竹を均等に割いて組み上げる骨組みづくりは熟練を要し、「貼りに3年、竹先に10年」といわれるほど長い修練が求められます。
一人前になるまでには長年の技術習得が必要ですが、代々の職人たちがその技を受け継いできました。
現在では「株式会社 稲藤(いなとう)」が唯一の製造元として、この伝統を守り続けています。
【種類別】日永うちわのおすすめ商品5選

伝統的な逸品から、現代の暮らしに寄り添う新しいアイデアまで、日永うちわはバリエーションが豊富です。
この章では、代表的なおすすめ商品をご紹介します。
- 松阪木綿・伊勢うちわ
- 香るうちわ
- 笛付きうちわ
- 小丸
- 東海道五十三次・友禅
用途や贈る相手に合わせて、お気に入りの一枚を見つけてみましょう。
参照:1.三重の伝統工芸が融合「松阪木綿・伊勢うちわ」

三重県の伝統文化が融合して生まれたのが、松阪や伊勢の「木綿」を貼った日永うちわです。
松阪木綿は、独特の「松阪嶋」と呼ばれる縞模様が美しい、三重県松阪地域産の綿織物です。
一方で伊勢うちわは、伊勢木綿を使用したタイプや、伊勢型紙でデザインされた高級路線の作品もあります。

筆者も、伊勢木綿のうちわを愛用していますよ!
型紙・木綿・うちわという三重が誇る伝統工芸が見事に調和した逸品です。
お値段(税込み)
・松阪木綿(大サイズ) ・伊勢木綿(大サイズ) | 3,630円 |
・松阪木綿(中サイズ) ・伊勢木綿(中サイズ) | 3,300円 |
・伊勢型紙:朝顔に蝶 中満(うちわ立て付) | 36,300円 |
2.扇ぐたびに香る癒しの「香るうちわ」

現代のライフスタイルに合わせてつくられた、革新的なうちわとして人気を集めているのが「香るうちわ」です。持ち手の上部に香り玉が仕込まれており、扇ぐたびに優しい香りがふわりと広がります。

リラックスタイムのお供や、お部屋のアクセントにもぴったりです!
四日市市のブランド「泗水十貨店(しすいじっかてん)」の認定商品には、特別なお茶の香りのバージョンも登場しました。
見た目の美しさに香りの要素が加わり、五感で涼を楽しめるギフトにも最適な逸品となっています。
お値段(税込み)
香るうちわ(中)緑茶の香り | 3,630円 |
香るうちわ (大) 花と草 ベージュ | 3,630円 |
香るうちわ(中)桜とうさぎ 紺 | 3,300円 |
3.音色も楽しめる「笛付きうちわ」

丸柄の空洞部分に笛を仕込んだ「笛付きうちわ」は、扇いで涼みながら、吹くと優しい音色が響くユニークな作品です。
デザインには、三重県志摩市や鳥羽市で活躍する海女さんの姿が描かれています。このイラストは銅版画家・吉田賢治氏によるもの。
海女は素潜り漁の際、浮上時に「磯笛」と呼ばれる独特の音で息継ぎを行い、その音が仲間への合図にもなってきました。

三重の文化と職人の遊び心が詰まった特別なうちわは、お子さんへのプレゼントにもおすすめです!
お値段(税込み)
笛うちわ ただようふたり | 4,730円 |
笛うちわ ただよいながら舞いながら | 4,730円 |
4.お土産にぴったり「小丸」

持ち運びやすさを考えた、可愛らしいミニサイズのうちわも開発されています。
このタイプは、「小丸(こまる)」というタイプで、伊勢海老や松阪牛、伊賀忍者、夫婦岩といった三重県ならではのモチーフがあしらわれているのが特徴です。
コンパクトでかさばらないため、観光で訪れた際のお土産にぴったり。地域の魅力が詰まったデザインは、旅の思い出としても残ります。
お値段(税込み)
小丸(ミニサイズ) | 2,970円 |
5.飾っても良し「東海道五十三次・友禅」

日永うちわは、扇いで使うだけでなく、美術品としてお部屋に飾って楽しむのにも向いています。
特に、歌川広重の浮世絵「東海道五十三次」をデザインしたものや、色鮮やかで華やかな「友禅」柄のうちわは、インテリアとして空間を美しく彩ります。
暮らしの中で気軽に日本の伝統美に触れられるのは、大きな魅力です。芸術性の高いデザインは、眺めているだけでも心が和みます。
お値段(税込み)
東海道五十三次 | 3,300円 |
友禅(大サイズ) | 3,080円 |
友禅(中サイズ) | 2,750円 |
「日永うちわ」はどこで買える?購入スポット一覧
美しい日永うちわを、ぜひ実物を見て選びたい。そんな方のために、四日市市で購入できる店舗から、便利なオンラインショップまで、購入方法をまとめました。
- 製造元「稲藤」の店舗
- 稲藤の公式通販サイト
- 四日市のお土産屋さん
それぞれ紹介していきます。
1.製造元「稲藤」の店舗

日永うちわの総本山ともいえるのが、唯一の製造元「株式会社稲藤」の店舗です。四日市市日永のギフトショップ「シャディイナトウ四日市本店」の中にあり、ゆっくりと商品を選ぶことができます。
1階はギフトコーナー、2階は日永うちわ専用の展示販売スペース。色とりどりのうちわがずらりと並ぶ光景は圧巻です。

実際に手に取って質感やデザインを確かめながら、自分にぴったりの一枚を選ぶことができますよ!
職人の手仕事が生み出す繊細な美しさを間近に感じられる空間は、購入だけでなく、訪れること自体が特別な体験になるでしょう。
2.【オンライン購入】稲藤の公式通販サイト
遠方にお住まいの方や、ご自宅でゆっくり選びたい方には、稲藤のオンラインショップが便利です。
公式サイトからアクセスでき、24時間いつでも注文が可能です。
実店舗同様にさまざまなうちわが取り扱われており、写真や説明を見ながらじっくり比較検討できます。ご自身のお好みに合うものや、大切な方への贈り物を心ゆくまで探せますよ。
3.四日市のお土産屋さん

稲藤以外にも、四日市市内のお土産屋さんで日永うちわを購入できます。
どの施設も四日市の特産品を多く取り扱っていますので、合わせてチェックしてみてください。
おすすめの施設を紹介していきます。
じばさん三重

近鉄四日市駅からアクセスしやすいのが「じばさん三重」です。
日永うちわはもちろん、萬古焼(ばんこやき)や大矢知そうめんといった四日市の名産品も揃っているので、お土産を見つけたい観光客にとって便利なスポットです。
じばさん三重のさらに詳しい情報は、関連記事「じばさん三重で買える四日市の名産品!体験イベントやアクセス情報も紹介」で紹介しています。合わせて確認してみましょう。

四日市物産観光ホール

近鉄四日市駅の構内にあり、気軽に立ち寄れる物産観光ホールです。
こちらでも、地元を代表する特産品として日永うちわが販売されています。
四日市の観光情報も得られるので、旅行での情報収集と合わせてお土産探しをするのに適しています。
四日市物産観光ホールの詳細は、関連記事「【駅直結】四日市物産観光ホールで観光情報と特産品をチェック!営業時間・アクセスも紹介」で紹介しています。

四日市近鉄百貨店

贈答品や上質な一品を探すなら、近鉄百貨店四日市店もおすすめです。
1階の伊勢路テラスや2階のプラグスマーケットには三重の名産が数多く並んでおり、日永うちわも手に入れられます。
百貨店ならではの品揃えで、贈り物を選ぶのに適している店舗です。
オリジナルの「日永うちわ」作り!製作体験ができる場所
日永うちわの魅力をより深く知るには、自分で作ってみるのが一番です。
ここからは、世界に一つだけのオリジナルうちわがつくれる、製作体験スポットを紹介します。
四日市市で体験「稲藤」
製造元である稲藤では、うちわ作り体験プログラムが提供されてることがあります。
体験では、数種類ある和紙の中から、自分の好みのものを選び、うちわの骨組みに貼り付ける作業が行えます。

四日市を訪れた記念に、本格的なものづくりに挑戦してはいかがでしょうか!
うちわ作り体験は不定期で行われています。稲藤の情報更新をチェックしてみましょう。
https://www.facebook.com/hinagauchiwa
稲藤フェイスブック:伊勢市で体験「めおと横町」
三重県伊勢市の観光と合わせて楽しむなら「伊勢夫婦岩めおと横丁」がおすすめです。
施設内の「めおと岩アクティビティ」では、稲藤が監修するうちわ作りを手軽に体験できます。
所要時間は40〜50分ほどで、作ったうちわはその日のうちに持ち帰れるため、旅のスケジュールにも組み込みやすいです。
かつて伊勢参りの土産物として愛された歴史に思いを馳せながら、旅の思い出を形にできる素敵な体験となるでしょう。
生活に彩りを加える「日永うちわ」の風を体験しよう

約300年の歴史と職人技が息づく日永うちわは、単に涼をとるための道具以上の価値を持つ、美しい工芸品です。
手になじむ丸い柄や竹のしなりが生み出す優しい風は、日々の暮らしに安らぎと彩りをもたらしてくれます。現在、その伝統は唯一の作り手である稲藤によって、大切に守り伝えられています。
今回ご紹介した店舗やオンラインショップ、うちわ作り体験などを通じて、あなただけの一枚を見つけてみてください。