四日市の「萬古焼(ばんこやき)」は、三重県を代表する伝統的な陶磁器です。
萬古焼という名前を初めて耳にする方もいるかもしれませんが、その国内シェアは非常に高く、日常生活の中で知らず知らずのうちに使われていることも少なくありません。
特に土鍋は、国内生産の約80%を占めるほどの人気を誇っており、耐熱性・耐久性に優れ、空だきや直火にも対応できるのが魅力です。急須に関しても、1979年に経済産業大臣指定の「伝統工芸品」に認定され、実用性と美しさを兼ね備えた逸品として高く評価されています。
出典:三重県「四日市萬古焼」
今回は、四日市在住の筆者が萬古焼について、以下の内容を解説します。
- 萬古焼が人気の理由
- 萬古焼の歴史
- おすすめの工房やショップ
- 陶芸体験ができる施設
- 四日市ばんこ陶芸器まつり
- 四日市の観光スポット
本記事を読めば、萬古焼への関心が高まること間違いありません。ぜひ参考にしてください。
四日市萬古焼が人気の理由

萬古焼は、土鍋の国内生産シェア80%を占めるほど、多くの家庭で親しまれています。なぜこれほどまでに支持されているのでしょうか?
その理由は、大きく分けて次の3点にあります。
- 素材のおいしさを引き出せる
- 頑丈だから長く愛用できる
- デザインが豊富で好みの商品を選べる
それぞれ見ていきましょう。
1.素材のおいしさを引き出せる

萬古焼の土鍋や急須は、厚みのある陶土で熱をしっかり蓄え、じんわり全体に伝えるため、料理やお湯が冷めにくく温かさを長時間保てるのが特徴です。
赤土粘土を使用した萬古焼の急須は、鉄分が渋みを吸収し、お茶をまろやかな味わいに変えてくれます。
遠赤外線効果を持つご飯鍋は、熱を均等に行き渡らせ、ご飯をふっくら甘く炊き上げます。
萬古焼は、料理やお茶のおいしさを引き立て、日常の食卓をより豊かにしてくれる存在です。
2.頑丈だから長く愛用できる
萬古焼の土鍋は耐熱性が非常に高く、ガスレンジや炭火の空だき、直火にも強いのが大きな特徴です。その要因は、陶土原料に含まれる「ペタライト」と呼ばれるリチウム鉱石。
ペタライトは熱膨張率が低く、急激な温度変化にも耐えられるため、耐熱陶磁器や耐熱ガラスの原料としても使用されます。萬古焼に使われる陶土には、40〜50%ものペタライトが含まれており、土鍋や急須を割れにくくしているのです。
最近は朝晩やっと涼しくなり、夜は暖かい食べ物が恋しくなってきました!
— 株式会社スズ木 (@banko_suzuki) October 25, 2023
寒い季節の食卓に欠かせない「土鍋」。日本国内で一番生産しているのが、三重県四日市市の萬古焼です。
ペタライトという陶石を混ぜることで、火に強い、割れない土鍋を作っています。#四日市 #萬古焼 pic.twitter.com/QwulrLj34L
耐久性に優れているだけでなく、時代に合わせた技術革新も進められており「IH対応土鍋」や「少人数用の小鍋」など、現代のライフスタイルにマッチした商品も開発されています。

頑丈で壊れにくい萬古焼は、家庭で長く使用でき、使うほどに愛着が深まっていきます。
3.デザインが豊富で好みの商品を選べる

約300年の歴史を持つ萬古焼ですが、特徴として「自由なデザイン性」が挙げられます。固定の型や技法に縛られず、作家たちが自由な発想で作品を生み出しています。
「萬古の印があることがいちばんの特徴」ともいわれる萬古焼は、形やデザインが非常に豊富。現在では、四日市市や菰野町を中心に100社以上の窯元で製造されています。
多くの窯元が競って現代のライフスタイルにあった機能性の高い商品を提案していることから、日本全国はもちろん海外にもその市場は広がっているのです。
江戸時代から続く萬古焼の歴史

萬古焼の起源は、1736年頃、桑名の豪商・沼波弄山(ぬなみ ろうざん)が現在の三重県朝日町に窯を開いたことに始まります。
弄山は稼業の屋号が「萬古屋」だったことから、自身の作品が永遠に残るようにと願いを込め「萬古」や「萬古不易」という印を作品に押しました。これが萬古焼という名前の由来です。
彼の死後、一時的に萬古焼の生産は途絶えましたが、同じ地域の森有節(ゆうせつ)・千秋(せんしゅう)という兄弟が復興を目指して開窯します。彼らの努力が実を結び、萬古焼は再び広がりを見せます。
さらに、山中忠左衛門(やまなか ちゅうざえもん)が四日市に窯を開き、萬古焼の技法を地域の人々に広めたことで、地域産業として確立されました。
技術と伝統が人から人へ受け継がれ、萬古焼は今もその歴史を紡ぎ続けているのです。
なお、萬古焼の歴史について詳しく学びたい方には、書籍「ここは ばんこ焼のまち!: 萬古焼の町から 魅力的な モノ・ヒト・コト」がおすすめです。萬古焼の歴史だけでなく、四日市を中心とした地域文化や萬古焼の現代的な活用方法まで幅広く紹介されていますよ。
四日市で萬古焼を堪能できるスポット5選
三重県の四日市市と菰野町には、現在100社以上の窯元が点在しており、萬古焼の魅力を体感できる展示施設やショップ、体験型のスポットも充実しています。
中でも特におすすめなのは、以下の5つの場所です。
- ばんこの里会館
- Banko Archive museum
- 醉月陶苑
- かもしか道具店
- 四日市市地場産業振興センター「じばさん」
それぞれ詳しく紹介していきます。
1.ばんこの里会館

萬古焼の歴史や技法、商品の特徴などを体系的に紹介する「ばんこの里会館」は、消費者に萬古焼を正しく理解してもらうことを目的に1998年に設立された施設です。
歴史と伝統に触れながら、萬古焼の魅力を存分に堪能できるこの会館は、地元の人々だけでなく観光客にも親しまれています。
項目 | 詳細 |
営業時間 | 10:00〜17:00 |
休館日 | ・月曜(祝日は除く) ・夏期休業 ・年末年始 |
住所 | 三重県四日市市陶栄町4−8 |
電話番号 | 059−330−2020 |
アクセス | ・近鉄川原町駅より徒歩5分 ・近鉄四日市駅より徒歩30分 ・JR四日市駅より徒歩35分 |
駐車場 | あり |
公式サイト | http://bankonosato.jp/wp/ |
駐車場の位置は、ばんこの里会館の北側です。
※会館の向かい側にある「萬古商業会館」の駐車場は使用できません


ばんこの里会館の魅力をさらに解説していきます。
1-1.ショップで萬古焼を購入できる

2階の産直ショップ「うつわ亭」にて、さまざまな萬古焼の商品が取り扱われています。産地ならではの豊富な品揃えで、お値打ち商品も多数販売されています。
オンラインショップも開設されているため、遠方にお住まいの方は自宅からの購入も可能です。
1-2.陶芸工房でオリジナル作品作り
ばんこの里会館の陶芸工房では、気軽な体験コースから本格的に学べる定時陶芸教室などさまざまなコースで陶芸の体験ができます。
本格的な工房でプロによる丁寧な指導のもと、陶芸の楽しさや、奥の深さを体験してみましょう。
項目 | 内容 |
開催時間 | 9:30〜12:00 13:30〜16:00 |
陶芸体験コース (所要時間2時間程度) | ・てびねり:3,500円 ・電動ロクロ:4,000円 |
絵付け/手彫り体験コース (所要時間90分程度) | ・カップ、湯呑、皿:1,500円〜 ・土鍋(6号〜):3,000円〜 ・蚊やり豚:2,500円〜 ・手彫り(湯呑):2,000円 |
2.Banko Archive museum

Banko Archive Museumは、陶芸家・内田剛一氏が「萬古焼の魅力をより多くの方に伝えたい……」という想いから企画した美術館です。2015年に、萬古工業会館の1階に開設されました。
白い壁で囲まれた大きな長方形の空間は、いくつもの箱で構成される独特なデザインが特徴です。
館内では、多様なデザインの萬古焼を楽しめるだけでなく、展示室の先にはショップやカフェスペースも併設されています。

萬古焼のアイテムを手に取りながら、カフェでゆったりとした時間を過ごせます。
項目 | 詳細 |
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営業時間 | 11:00〜18:00 |
休館日 | 火曜日・水曜日 |
住所 | 三重県四日市市京町2−13−1F |
電話番号 | 059−324−7956 |
アクセス | 近鉄川原町駅より徒歩10分 |
駐車場 | あり(敷地内に5台分) |
公式サイト | https://banko-a-d-museum.com/exhibition/index.html |
3.醉月陶苑

醉月陶苑(すいげつとうえん)は、伝統的な萬古焼を制作する窯元で、2012年にはその急須が「三重ブランド」に認定されるという実績を誇ります。
3代目の清水醉月氏が手がける急須は、G7伊勢志摩サミットの晩餐会や、総理大臣夫人主催の夕食会で使用されるなど、その品質と美しさが高く評価されています。
陶芸初心者向けの急須作りセットを考案し、陶芸教室や定期的なイベントを開催していることも魅力のひとつです。1日体験コースでは、萬古焼の伝統粘土を使ってカップやお皿、お茶碗などを制作できます。
1日陶芸体験 | 詳細 |
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料金 | ・中学生以上:1人3,500円 ・小学生以下:1人2,500円 ※粘土代・焼成費込 ※プラス500円で1作品の追加制作が可能 |
所要時間 | 約1時間 |
アクセス | 三重県四日市市西坂部町1103 059−332−8218 四日市福王山線西坂部駅より徒歩16分 |
その他 | 商品を発送する際は、送料の実費負担要 |
公式サイト | https://bankoyaki.jp/ |
4.かもしか道具店

かもしか道具店は、三重郡菰野町に位置するショップです。
萬古焼の窯元「山口陶器」が手掛ける地域ブランドとして展開されており、陶器に限らず、生活雑貨やインテリアなど、暮らしを豊かにするアイテムが揃っています。

店内では、四日市市と菰野町の窯元4社「山口陶器」「竹政製陶」「三鈴陶器」「南景製陶園」が共同で立ち上げたブランド「4th-market」の商品も取り扱っています。
食器や土鍋、急須など、各窯元の得意分野を活かしたアイテムは、見ているだけでも楽しく、日常の食卓を彩る逸品です。
項目 | 詳細 |
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営業時間 | 10:00〜16:00(土日祝 10:00〜17:00) |
定休日 | なし ※年末年始の休業・臨時休業は、公式サイトでご確認ください |
住所 | 三重県三重郡菰野町北2834−2 |
電話番号 | 059−327−6555 |
アクセス | 東名阪自動車道 四日市I.Cより車で約20分 新名神高速道路 菰野I.Cより車で約10分 |
駐車場 | あり |
公式サイト | https://www.kamoshika-douguten.jp |
オンラインショップ | https://www.kamoshika-douguten.jp/ |
5.四日市市地場産業振興センター「じばさん」

四日市市地場産業振興センター「じばさん」は、三重県北勢地域を中心とした地場産品を数多く取り扱う施設です。中でも萬古焼の商品が豊富に揃っており、訪れる人々に地元の魅力を発信しています。
正面玄関ロビーには、萬古陶磁器工業組合青年部が制作した「日本一の蚊やりぶた」が展示されています。体重700キログラム、高さ1.6メートルの巨大サイズで、その迫力に思わず足を止めてしまうことでしょう。
萬古焼の技術と遊び心が詰まった迫力のある作品です。

萬古焼以外にも、以下のような豊富な地場産品を販売しています。
- 伊勢形紙
- 伊勢茶
- 大矢知手延素麺
- 地酒
- 銘菓
また、四日市のゆるキャラ「こにゅうどうくん」が動画で施設を楽しく紹介しています。こちらもぜひチェックしてみてください。
項目 | 詳細 |
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営業時間 | 10:00〜19:00 |
定休日 | ・毎週水曜日(祝日の場合は翌日) ・12/29〜1/3 |
住所 | 三重県四日市市安島1−3−18 |
電話番号 | 059−353−8100 |
アクセス | 近鉄四日市駅より徒歩5分 |
駐車場 | なし |
公式サイト | https://www.yokkaichi-shinko.com/jibasan/index.html |
毎年開催されている「四日市ばんこ陶芸器まつり」

四日市では毎年5月に「四日市ばんこ陶芸器まつり」が開催されています。この祭典は1963年に始まっており、2021年からは「四日市ドーム」がメイン会場、「ばんこの里会館」が第2会場です。
2024年の開催時には、40以上の店舗が出店し、多くの来場者でにぎわいました。
「よっかいちばんこ焼陶器まつり」に出店させていただきました!
— 株式会社スズ木 (@banko_suzuki) May 19, 2024
ご来場いただいた皆様、本当にありがとうございます。
2日間ともとっても賑わっていました♪
会場では、いろんなゆるキャラさん達も勢ぞろい!
イベントも盛りだくさんの2日間でしたよ。 pic.twitter.com/PBHn2CuefI
ばんこ陶芸器まつりでは急須や土鍋など、さまざまな萬古焼の陶磁器をお買い得に購入できます。
萬古焼の魅力をたっぷり堪能できる機会なので、ぜひ一度訪れてみてください。
開催日 | 毎年5月 第3土日 |
第1会場:四日市ドーム | 【住所】 三重県四日市市羽津甲5169 【アクセス】 近鉄霞ヶ裏駅より徒歩15分 【お問い合わせ】 萬古陶磁器卸商業協同組合 059−331−3496 |
第2会場:ばんこの里会館 | 【住所】 三重県四日市市陶栄町4−8 【アクセス】 近鉄川原町駅より徒歩5分 【お問い合わせ】 059−330−2021 |
萬古焼とあわせて楽しむ四日市の観光スポット

萬古焼を堪能したら、近くの観光スポットも訪れてみましょう。
おすすめは、以下の3つです。
- 四日市市茶屋「泗翠庵」
- 四日市市立博物館
- 四日市コンビナート夜景クルーズ
それぞれ紹介していきます。
1.四日市市茶屋「泗翠庵」

泗翠庵(しすいあん)は、近鉄四日市駅近郊にある鵜の森公園内に位置する茶室です。
茶道や俳句といった日本古来の伝統文化に親しめる場として、1994年に数寄屋建築の巨匠・中村昌生氏の設計により建てられました。
茶室内には、気軽に抹茶を楽しめる立礼席(りゅうれいせき)があり、550円で四日市産の抹茶と市内の和菓子店のお菓子を味わうことができます。
(2025年1月現在)
夏冬年2回開催される「萬古作家のお茶碗でお茶を楽しむ」イベントでは、萬古作家の茶碗から好みのものを選んで抹茶をいただけます。
本格的な茶室と庭園の見学も可能で、四日市の伝統文化を体験できる貴重な場所です。
項目 | 詳細 |
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営業時間 | 10:00〜16:00 (立礼席は15:40までに入席) |
定休日 | ・毎週月曜日(祝日の場合は翌日) ・年末年始 12/28〜1/4 |
住所 | 三重県四日市鵜の森1−13−17 |
電話番号 | 059−352−4960 |
アクセス | 近鉄四日市駅西口あすなろう四日市駅より徒歩5分 |
駐車場 | あり (鵜の森神社横に7台分) |
公式サイト | https://yonbun.com/shisuian/ |
2.四日市市立博物館

四日市市立博物館は、歴史や文化を体験しながら学べる複合施設です。「そらんぽ四日市」として、博物館、プラネタリウム、四日市公害と環境未来館が一体となっています。
常設展示「時空街道」では、古代から江戸時代までの住居が原寸大で再現され、見て触れて楽しめます。
注目はプラネタリウム「GINGA PORT 401」。ギネス記録に認定されたシステムで1億4,000万個以上の星を映し出し、宇宙を身近に感じられます。
隣接する「じばさん三重」では、萬古焼の商品も購入できます。

観光の際には、ぜひ立ち寄ってみてください。
項目 | 詳細 |
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営業時間 | 9:30〜17:00 ※土曜日は1階・5階のみ19:30まで開館 (展覧会への入場は16:30まで) |
定休日 | ・毎週月曜日(祝日の場合は翌日) ・年末年始 12/28〜1/4 |
観覧料 | 無料 ※プラネタリウムと特別展は有料 |
住所 | 三重県四日市市安島1−3−16 |
電話番号 | 059−355−2700 |
アクセス | 近鉄四日市駅より西へ徒歩3分 JR四日市駅より西へ徒歩20分 |
駐車場 | なし (最寄りに提携駐車場あり) |
公式サイト | https://www.city.yokkaichi.mie.jp/museum/museum.html |
なお、四日市市立博物館については、関連記事「雨の日も満喫!四日市市立博物館5つの見どころ|家族で楽しむ「プラネタリウム・時空街道」」で詳しく紹介しています。ぜひ 参考にしてください。
3.四日市コンビナート夜景クルーズ

四日市コンビナート夜景クルーズでは「日本夜景遺産」に選ばれた美しい工場夜景を楽しめます。
クルーズ船から見る夜景は、陸上では見られない角度で巨大な工場設備や煙突を間近に眺められ幻想的な景色が楽しめるのが魅力です。
夜景クルーズとあわせて萬古焼体験を楽しめる「四日市萬古焼体験セットプラン」もあります。

お申し込みは、インターネットまたは電話で受け付けています。
申し込み方法 | 詳細 |
インターネット予約 | 公式サイトから24時間いつでも予約可能 |
電話予約 | 平日10:00〜17:00 四日市コンビナート夜景クルーズ専用デスクにて受付 059-327-5377 |
どちらの方法でも、希望のプラン、日時、人数を伝えて予約します。
四日市コンビナート夜景クルーズについては、関連記事「四日市コンビナート夜景クルーズを楽しみつくす!3つの魅力と全プランの詳細」で詳しく紹介しています。こちらもぜひ参考にしてみてください。
萬古焼の魅力を体験しに四日市へ出かけよう!

四日市市を代表する「萬古焼」は、全国の土鍋生産の大部分を担い、耐熱性や優れたデザイン性で高く評価されている伝統的な陶芸品です。
市内や隣接する菰野町には、多くの窯元があり、見学や陶芸体験が楽しめます。その中でも「ばんこの里会館」は、萬古焼の歴史や作品の展示、陶芸体験、お土産選びができる人気スポットです。
観光スポット巡りと合わせて、萬古焼の魅力を体感してみてください。